【著者】西部謙司
【発行】株式会社カンゼン
A5判/272ページ
2020年7月13日発売
本書では歴史の古いヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学"」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた。
例えばマンチェスター・ユナイテッドは「ミュンヘンの悲劇」によって、「何があっても前進する」精神性を身に付けている。
レアル・マドリーはアルフレッド・ディ・ステファノの補強が大成功し、「計画できないところは選手が補ってくれる」ことを現在も具現化している。
バルセロナはまさに哲学と呼ぶに相応しいものを持っているが、負ける時は負けるべしくて負け、ユナイテッド、レアルのように奇跡を起こすことがあまりない……。
それぞれのクラブにはやはりDNA(遺伝子)があり、“香り"がある。
ヨーロッパの厳選20クラブの哲学を知れば、現在のフットボールシーンをより楽しむことができるはずだ。
【目次】
まえがき
クラブ年表
クラブ相関図
■「常勝クラブ」の哲学
I.レアル・マドリー:強い奴を集めてとにかく勝つこと
・全方位型のじゃんけん王者
・ディ・ステファノという具体的規範
・スターコレクションからの銀河系
・個が戦術不足を補えばいいじゃないか
II.ユヴェントス:まとまりすぎの安全第一主義
・“ザ・シルヴァーコレクター"
・機能性がアズーリと瓜二つ
・リッピの強靭なフィジカル志向
・まとまりの良さが生むジレンマ
III.バイエルン・ミュンヘン:精神的支柱は皇帝の激怒
・1860ミュンヘンの平手打ち
・ゴールは中央にある
・節目節目の皇帝の癇癪
・健全経営の「レアル・マドリー」
■「“ザ哲学クラブ"」の哲学
I.バルセロナ:永久に問う「クライフ原理主義」と「メッシシステム」の共存
・「クラブ以上の存在」という明確な役割
・「4番」→「6番」→「9番」の新縦軸
・「ラファエロの弟子」のルネサンス
・皮肉なMSNの大艦巨砲主義
・「メッシシステム」の呪縛
II.アスレティック・ビルバオ:ビッグクラブが失った「幸福」を追い求める
・力自慢がもてはやされる地域性
・オールバスク人の属地主義
・ビエルサが描いた「ナスカの地上絵」
・忠誠心と犠牲心と少しの笑い
■「港町クラブ」の哲学
I.リヴァプール:特権階級を作らない平等なハードワークの流儀
・「第二のユナイテッド」に反する強化方針
・秩序の破壊とカオスの導入
・「乱戦上等」だけではないしたたかさ
・精神的な社会主義者
II.ナポリ:神の子をも巻き込む情熱と反逆
・デカい声と絶倫顔のナポリタン
・世紀の大天才も吸い込まれる情熱
・ボロ雑巾的反逆思想
・分断と逃亡を飲み込むなにくそ魂
III.マルセイユ:Droit Au But――ゴールへ真っ直ぐ
・直接的な“パンの雨"
・豪腕会長のマフィア色注入
・黒い噂にDroit Au But
・短期集中型によるカリスマ乱用
■「ライバルクラブ」の哲学
I.インテル×ミラン:革新性溢れるアンチテーゼVS伝統を重んじるコスモポリタン
・「門戸を開きたい」か「開きたくない」か
・閂で繋がっていた青黒と赤黒
・“属人的"へのアンチテーゼ
・面白くないコスモポリタン
II.ベンフィカ×ポルト:似た者同士の名将が形成した「豪快な攻撃力」と「堅実無比」
・「知識」と「日用品」2つのバッグ
・開花→売却の“ポルトモデル"
・解けないグットマンの呪い
・酷似監督が植え付けた盾と矛
■「成金クラブ」の哲学
I.マンチェスター・シティ:先進性と理詰めのアプローチで水色の細い糸をつなぐ
・憎きユナイテッドと共同作業
・サポーターの異常なまでの屈折
・今やエビのサンドイッチを食べるのに夢中
・トータルフットボールの聖火リレー
II.パリSG:中身は薄っぺらくとも外見だけは華やかに
・花の都のやさぐれ
・パリ市のサンジェルマン外し
・良いクラブは金で買える
・華やかなパリ向きのカナリア色
■「小さな街の大きなクラブ」の哲学
I.ボルシア・ドルトムント×ボルシアMG:ドイツフスバルを体現する秩序と混沌の両立
・権威に対する「反骨心」
・一糸まとわぬ姿の自由主義
・秩序と自由の二面性の許容
・シームレスなフットボール
II.ヴィジャレアル:黄色いタイルを盗まれても新たな黄色いタイルを作ればいい
・小さい街=貧乏の大ウソ
・タイル工場のような育成システム
III.モナコ:空虚な黄金時代というルーチンを繰り返す
・タックス・ヘイヴンによる大物釣り
・それでも空虚な努力を繰り返す
■「名将クラブ」の哲学
I.マンチェスター・ユナイテッド:「赤いバス」は何があっても走り続けなければいけない
・悲劇と奇跡が形成した選民意識
・マグニフィセント7の系譜
・戦後に生まれた「バスビー憲法」
・ファギーの「赤いバス」
II.アーセナル:ヴェンゲルの麻酔が切れても「勝利は調和から」は普遍
・退屈な「フェイマス4」のブツ切り
・先鞭をつけたヴェンゲルの青田買い
・英国の戦闘的伝統を残したインヴィンシブルズ
・いよいよ切れたヴェンゲルの麻酔